「次に〇〇したら離婚します」という合意は有効?
離婚離婚事由次に〇〇したら離婚します」という合意は有効?
有効とは言えません。
約束後に「〇〇」という行動があった場合、問答無用で離婚ができるか?たとえば相手が「たしかに約束はしたし、〇〇という行動をしたのも事実だが、離婚はしたくない」と言っている場合でも離婚届を出して協議離婚を成立させてもよいか?となると、理論上はNGです。
離婚を成立させるには、その時点で(離婚届出の時点で)、夫婦の双方に「二人の婚姻関係を終わりにする。離婚する」意思があることが必要なためです。
お金の貸し借りであれば、「たしかにお金を借りた時は1年後に返済するつもりで、その旨の借用証書も差し入れたが、気が変わった」などということは通用しませんが、離婚のような身分行為では、以前に約束をしているだけではダメで、「離婚を成立させる時」に「離婚をする」という意思が必要なのです。
そのため、「約束をしておけば、相手が嫌だと言っていても、以前の約束に基づいて離婚届を出してしまって問題ない」とは言えません。
約束違反に対する損害賠償の請求はできる?
このように、「次に〇〇したら離婚します」という約束は、相手に強制することができない約束なので、「以前に約束をしていたのに、約束を破って離婚を拒んだ」ことの損害賠償を請求しても、認められません。
「やっぱり離婚はしたくない」と主張すること自体は、自由なのです。
それでも離婚ができる場合はある
ただ、「約束に基づいて」離婚を成立させることができないとしても、裁判で離婚が認められる可能性はあります。
たとえば、「次に配偶者以外の異性と性的な関係をもった時には離婚します」と約束していた場合、「配偶者以外の異性と性的な関係をもつ=不貞」そのものが法定離婚事由(相手が離婚を拒んでいても裁判所が離婚を命じることができると法律が定めている事由)ですから、約束があろうがなかろうが、離婚は認められるでしょう。
また、「次に〇〇をしたら…」の「〇〇」が法定離婚事由にあたるような事情でなくとも、こういった約束があるということは、夫婦の一方が「〇〇という言動はどうしても許容できない。次にこれがあった時はとても夫婦の関係を続けていくことができない」と考えており、それを相手にも伝えて共有し、相手も「わかった。もう〇〇という言動はしない」と約束しているわけです。「〇〇」の内容にもよると思われますが、このような経緯の上で約束違反があり、さらに婚生活の実態も壊れてしまっているような場合(別居など)、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、離婚が認められる可能性もあるかと思います。
「次に〇〇したら離婚します」という約束に意味がないわけではない
夫婦の間で話し合い,「次に〇〇したら離婚します」という約束をすること自体が違法だ,ダメだというわけではありません。実際に「〇〇」という言動があった場合に「約束どおり離婚しましょう」と離婚を成立させることは可能です。
矛盾するようですが,これは,実際に離婚を成立させる時点で「(以前の約束どおり)離婚しよう」という合意ができているので、問題がないのです。