親権を勝ちとるためには
離婚離婚と子ども「親権」とは、未成年者の子供を監護・養育し、その財産を管理し、子供の代理人として法律行為をする権利や義務のことです。
未成年の子供がいる場合、子供の親権者が決まらなければ、離婚はできません。したがって、夫婦とも離婚はしたいのだが、どちらが親権者となるかで揉めており、離婚ができないというケースもよくあります。
話し合いで決まらなければ調停へ、それでも決まらなければ、裁判で決めてもらうことになります。
親権とは親の「権利」であると同時に、社会的に未熟な子どもを保護して、子どもの成長を図っていくという親の「義務」でもあります。したがって、「子どものためにはどちらを親権者としたほうがよいのか」が判断基準となります。
親権を判断するために、考慮される事項
- 子供の現在の生活環境が変わらないか
- 養育を助けてくれる親族などがいるか
- 兄弟姉妹が一緒にいられるか
- 子どもに対する愛情の深さ
- これまでどちらが主に子供を養育していたか
- 子ども自身の気持ちや希望
- 子どもの年齢や性別、発育状況
- 親の年齢や心身の健康状態
- 親の経済力
たとえば、親権者となることを熱望しているし、子供への愛情もあるのだけれど、病気のため、子供の面倒をみることはできない、助けてくれる親族も近くにいないといった場合には、子供が幼く、生活のために親の手助けが必要な年齢であれば特に、親権者となることは難しくなります。
「長男の親権は欲しいけど、次男とはそりが合わないので、次男の親権はいらない」という親と、「長男も次男も一緒に引き取って育てたい」という親であれば、後者の方が有利かもしれません。
ただ、いろいろな事情を考慮して、「総合的な判断」を行いますし、「この条件を満たせば5ポイント」といった点数制でもないので、たとえば、「自分はここが不利だ」と落ち込んだり、「相手にはこういう事情があるから、親権者としては不利でしょ?」と決めつけたりはしないことです。
母親は有利なのか?
なお、よく相談者や依頼者の方から、「母親の方が有利なんですよね?」と聞かれますが、母親だから無条件で有利であるということはありません。ただ、特に子供が乳幼児である場合、主に育児をしているのは母親という家庭が多いと思います。「母親だから」ということではなく、これまでも今も子供を養育しているということで、親権者として認められやすいということはあります。
親のどちらもが「子供の親権をとりたい」と望み、争っているケースは、たいての場合、親どうしの条件にそこまで大きな違いがありません。どちらも子供を大切に思い、子供の養育を頑張っているからこそ、争いになるともいえるでしょう。
こういった場合、最も重視されるのは、「今、どちらの親が実際に子供を養育しているか」ということです。子供にとって、住む家や学校が変わったり、それまで暮らしていた人やお友達から引き離されるのは、大きなストレスです。子供本人に聞けば確実に「引越しや転校はしたくない」と言うでしょう。
親権者を定める場合は、親の幸福や都合ではなく、「子供にとっての幸せ」を最も重視するため、裁判所は「今の環境で子供が問題なく育っているようであれば、その環境から子供を引き離すべきではない」と考えます。
したがって、「現時点で子供を養育している親の方が有利」ということは、言えると思います。ただ、だからといって、子供を無理やり連れ去るといったことをすれば、かえって不利になる可能性があります。子供の親権は、非常にデリケートな問題なので、軽率な、あるいは感情的な行動をとる前に、弁護士に相談することをお勧めします。
子供の年齢との関係
なお、子供の年齢が大きくなるにつれて、親権者の決定には子供自身の意思が大きく反映されるようになります。15歳以上の子供については、裁判所が子供本人に、「どちらと一緒に暮らしたいか」、「どちらに親権者になって欲しいか」を聞き、子供本人の希望も考慮して、親権者を定めることになっています。
「15歳未満であれば、子供の意思は考慮しない」ということではなく、15歳に近づくにつれて、「子供本人はどう考えているか?」が、少しずつ重視されるようになります。
最後に、「不貞」という事情は、親権者を定める場面ではあまり重要視されません。夫として、あるいは妻として問題があったという事情と、子供の親として適切かという問題は、基本的に切り離して考えます。したがって、ただ「不倫をした」というだけでは親権の問題には影響しません。
ただし、「不倫相手と会う際、幼い子供を夜遅くまで連れまわしたり、一緒にラブホテルに行ったりした」など、子供の立場や心情をかえりみない行動があり、子供を傷つけるようなことを繰り返していれば、親権の問題においても考慮されることになります。