退職金は財産分与の対象になる?
離婚離婚とお金(財産分与)ただし、「支払われた退職金の全額」が対象になるとは限りません。退職金が財産分与の対象となるのは、退職金が「賃金の後払い」的性質を有するためです。就職から退職までの間、会社のために働いたことへの対価として賃金(給与や賞与)の支払を受けますが、この賃金を全て支払うのではなく会社にプールしておき、プールされていたお金を退職時にまとめて受け取る…という考え方になります。
ここから、「結婚後の働きについては、その陰に配偶者の貢献(いわゆる内助の功)があり、この間にプールされていった退職金に対しては配偶者にも権利がある」となります(ただし、離婚より前に別居している場合は通常、「結婚から離婚まで」ではなく「結婚から別居まで」の間に限定)。
就職後に結婚した場合、「就職から結婚まで」の期間は配偶者の貢献がありません。そこで、退職金の全額ではなく、このうち「結婚から退職まで」(別居の方が退職よりも早ければ「結婚から別居まで」)の期間に形成された部分のみが、財産分与の対象となります。
また、財産分与では基本的に、「財産分与の基準時(通常は別居時)」に存在する(残っている)財産が対象となります。
「10年前に定年を迎え、退職金として3000万円の支払を受けたが、その後の10年間で生活費や子供の学費などに1000万円を使い、別居時に残っていたのは2000万円」という場合、既に使ってしまった部分は財産分与の対象とはなりません。
形を変えて残っている場合は別です。「退職後、退職金3000万円と預金1000万円で新築一戸建てを買った」という場合、別居時に残っていれば、この一戸建てが財産分与の対象となります。ただ、新築で購入した建物は通常、購入後はかなり価額が下がります。財産分与を考える時の金額は、「購入時に投じた4000万円」ではなく「別居時における一戸建ての時価」なので、その点は注意が必要です。