Yさんは、就職後に妻と結婚し、3人の子供をもうけました。Yさんは、家事も育児も「自分のこと、自分たちの子供のことなのだから、やって当然」と自然に考えており、職場の理解を得るための努力もしながら、できる限り家事も育児も行っていました。
妻はYさんの行動には細かくダメ出しをし、しまいには必ず人格や能力の否定に行きつきます。Yさんが妻の意に反する言動をとると、妻は妻なりの理屈を並べてYさんを攻撃します。Yさんは、初めのうちは反論していましたが、妻が折れることは絶対にありません。喧嘩が続くと家庭内の雰囲気も悪くなるので、Yさんは子供たちに申し訳なく、「家庭を平穏に保つには、自分が妻に逆らわず、なんでも妻の思う通りにするのが一番」と考えて、その通りに行動するようになりました。
しかし、こういった生活が20年以上続いたある日、Yさんの気持ちは限界に達し、家に帰ることができなくなってしまいました。こうして、妻との別居が始まりました。
別居後も変わらず妻がYさんの給与を管理しており、Yさんには「お小遣い」しか渡されないため、このままでは生活ができません。そこで「どうしたらいいだろう」と相談にいらっしゃいました。
「絶対に離婚はしない」と拒んでいた妻との間で和解ができ、財産分与についても折り合いがついた事例(離婚調停)
財産分与離婚- 性別:男性
- 依頼者情報:50代
背景
相談内容と弁護士対応
まずは、Yさんと妻の収入額を確認し、Yさんが妻に支払うべき婚姻費用の金額を計算しました。
そして、①妻と子供たちが住む自宅の住宅ローンは引き続きYさんが返済する、②妻には適正額の婚姻費用を支払う(ただし、住宅ローン返済をYさんが行うことを考慮した金額)ことはきちんと段取り、弁護士から妻にも伝えた上で、Yさんのお給料はYさん自身が管理できるようにしました。
妻も働いていますし、婚姻後の貯金も全て妻が管理しているので、「生活ができなくなる」ことはないはずです。
その後、離婚調停を申し立てました。妻は当初「絶対に離婚はしない」と言っていましたが、時間が経つにつれて、条件付きで離婚に応じてもよいかもしれない…という変化が見えてきました。
最終的には、持ち家は妻に譲ること、まだ少し残っている住宅ローンは今後もYさんが返済を続けて完済すること、妻はYさんの退職金や保険については財産分与を求めないことなどを合意して、離婚に至ることができました。
結果
「モラハラ」と言うと、加害者は男性(夫)、被害者は女性(妻)という事例が多いように見えますが、夫がモラルハラスメント被害に遭っているケースも勿論あります。
Yさんの場合、「家を出る」、そして「弁護士に相談する」という行動に出られたことが、とても大きな一歩だったと言えます。
※実際の事例そのままではなく、複数の事例を組み合わせたり、当事者の方の年齢その他を一部変更しています