Xさん(女性)は、夫(会社経営者)との生活に耐え兼ね、子供を連れて実家に戻りました。
Xさんは、これまでの経緯から「私が夫と直接話そうとしても、話し合いにはならないし、離婚を求めてもうやむやにされてしまう」と考え、当事務所に相談されました。
婚姻費用分担調停を申し立てた途端に「経営する会社の業績が悪化して収入が激減した」との主張を受けた案件(婚姻費用分担調停・交渉)
婚姻費用離婚離婚と子ども- 性別:女性
- 依頼者情報:20代
背景
相談内容と弁護士対応
Xさんからは、離婚と婚姻費用について「交渉」を行う依頼を受けました。しかし、夫の反応はどちらについても芳しいものではなかったため、Xさんと協議の上で、まずは婚姻費用分担調停を申し立てることにしました。
Xさんは夫の収入を把握しておらず、手がかりとなるような資料もお持ちではありませんでした。そのため、この調停で「源泉徴収票や確定申告書(控)を出して欲しい」と求めたところ、「先月ころから会社の業績が悪化したので、役員報酬を大幅に切り下げた。今の収入はこれしかない」として、最新の給与明細書が提出されました。しかし、あまりにタイミングが良すぎます。また、Xさんが収集した情報によると、会社の業績は順調そうですし、夫もこれまでと変わらない生活ぶりのようです。そのため、夫の収入や会社の業績の裏付けとなりそうな事実関係、夫の収入を推測する手がかりとなりそうな資料などをあれこれ提出し、「業績悪化や収入減が事実とは認められない。前年度までの収入額に基づいて、婚姻費用の金額を計算すべき」と主張しました。そうするうちに会社の決算期も到来したため、「会社の決算報告書を提出して欲しい」と求めたところ、裁判所からも強い後押しが得られました。
夫は「会社関係の資料は絶対に出したくない・出せない」という姿勢で、結局、会社関係の資料としてはっきりしたものは何も出ませんでしたが、最終的には、相当額の婚姻費用を支払う内容で調停が成立し、離婚についても合意に至って、養育費やその他お金の問題については公正証書を作成し、協議離婚が成立しました。
結果
相手方が自営業者や会社経営者の場合、婚姻費用や養育費を請求すると「収入が激減した」と言われることがあります。また、「収入に関する資料を何も出してもらえない」こともあります。
婚姻費用や養育費は、請求する側・支払う側の収入によって変わりますから、当事者それぞれの収入額を把握することがどうしても必要です。そのため、相手方が収入に関する資料を出さない場合や、資料は出したが「本当かどうか疑わしい」という場合、裁判所は相手方に資料を出すよう働きかけたり、説明を求めたりしてくれます。
それでも資料が提出されなかったり、疑いが払拭されないような場合、「収入額を確認できないので、婚姻費用や養育費は0円」というわけにはいきませんから、「平均賃金程度の収入は得ているものとして、婚姻費用や養育費の金額を計算する」といった方法をとることもあり得ます。
現在の制度上はまだまだ限界がありますが、「収入がない」、「これしか払えない」と言うだけで、簡単にその言い分が通るわけではありません。こういった場合は、諦める前に一度、弁護士に相談だけでもしてみることをお勧めします。
※実際の事例そのままではなく、複数の事例を組み合わせたり、当事者の方の年齢その他を一部変更しています
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