不貞相手への慰謝料、不貞の慰謝料の相場はいくらぐらい?
不貞相手への慰謝料判決であれば、一般的に150~200万円ほどですが、話し合いや、訴訟をしても和解で解決する場合は、もっと低い金額になります。
目次
1 金額に幅がある理由(婚姻関係への影響)
以下のような場合、慰謝料の金額は高くなります。
結婚生活が数十年にわたっている等の事情があれば、200万円を超えることも考えられます。
- 円満で
- 長く続いていた夫婦関係が
- 不貞を直接のきっかけとして破綻してしまった(夫婦が離婚した、まだ離婚は成立していないが弁護士に依頼して離婚協議中である、離婚調停をしているなど)
以下のような事情は、慰謝料の金額を下げる要因となります。
- 不貞の前から、夫婦関係が良好ではなかった(良好ではなくなった原因が主に「不貞をされた」側にある場合は特に)
- 結婚生活が短い
- 不貞が発覚した後も、離婚には至っていない
不貞をされた配偶者が「どれだけショックを受けたか」は、基本的にそれほど金額に影響しません。
不貞により結婚生活や夫婦の関係が壊れてしまったかどうか?不貞前の結婚生活がどのような内実のものだったか?が、金額をはかる上ではより重要です。
2 金額に幅がある理由(不貞行為の内容)
以下のような事情は、慰謝料の金額が上がる要因となります。
ただ、よほど「ひどい」事情がない限りは、「1」と比べると金額への影響は低めです。
- 不貞関係が長年続いている
- 配偶者が、不貞相手との交際や同居のため、夫婦・家族で暮らしている家を出ている
- 不貞を行った配偶者と不貞相手の間に子供が生まれている
3 不貞を行った配偶者、不貞相手、どちらにも全額を請求できる
不貞の慰謝料では、被害者が1人(不貞をされた配偶者)、加害者が2人(不貞を行った配偶者と不貞相手)います。
被害者(不貞をされた配偶者)は、自分に発生した損害の賠償(=慰謝料)を、加害者のどちらに対しても「全額」請求できます。
この場合、加害者の側は「支払をすべき者(加害者)は2人いるのだから、私は慰謝料のうち半分だけ支払います」とは言えません。
あくまで「全額」について支払義務があります。
ただ、この場合、被害者(不貞をされた配偶者)が加害者それぞれから全額(つまり2倍のお金)を受け取れるわけではないので、たとえば加害者Aが慰謝料全額を支払った場合、もう一人の加害者Bは、被害者(不貞をされた配偶者)に対し、支払をする必要はありません。
その代わり、慰謝料全額を支払った加害者Aより「あなたの分も払ったから、私があなたのために負担した金額を払って」と請求を受けることはあり得ます。
これを「求償」といいます。
4 不貞をした配偶者と不貞相手の負担割合(どちらが何割くらいの負担?)
裁判になった場合、不貞を行った配偶者と不貞相手であれば、「不貞を行った配偶者」の方がより責任が重いと考えます。
夫婦は、結婚により互いに貞操義務(配偶者以外の異性とは性的な関係を持たない)を負います。
不貞をした配偶者は、結婚により自身の夫または妻に対して貞操義務を負っていたのに、これに反したわけですから、より悪く、責任も重いと考えるのです。
そのため、「不貞をした配偶者」と「不貞相手」が慰謝料を負担すべき割合は50%ずつではなく、「不貞をした配偶者」の方が多くなります(たとえば、不貞配偶者:不貞相手=6:4など)。
なお、不貞の始まりや継続にあたりどちらかが非常に積極的であったとか、二人の間に仕事上の上下関係があった(そのために不貞関係を断りにくい状況だった)、どちらかが未成年であるといった事情があれば、これは負担割合に影響します。
5 不貞相手だけに請求をした場合
被害者(不貞をされた配偶者)は、加害者の片方だけに全額を請求することも可能です。
たとえば、「自分の配偶者には請求せず、不貞相手にだけ慰謝料を請求する」こともできます。
不貞相手は、「不貞をされた配偶者」に対しては「私の負担割合は30%程度なので、その金額だけ払えばいいですよね」とは言えませんが、「不貞をした配偶者」に対しては「あなたにも支払義務があるのだから、あなたが負担すべき分は払って欲しい」と求償ができます。
「不貞をされた配偶者」が離婚を望んでいない場合、不貞相手から慰謝料全額の支払を受けると、不貞相手が「不貞をした配偶者」に求償をする可能性大です。
「この二人の間で、協議やお金のやり取りが続いてしまうのは嫌だ」というのは、一般的な心情かと思います。
また、たいていの家庭では、「私があなたの不貞相手から支払ってもらったお金は私だけのお金。
あなたが不貞相手から求償を受けた場合は、あなたのお小遣いから支払をして、家計や共有財産からは一切お金を出さないで」というのは、なかなか難しいでしょう。
求償を受ける金額は、100万円を超える可能性もあります。
仮に「お小遣い」の中から払うとなれば、場合によっては数十年にわたり、配偶者から不貞相手への支払が続く可能性もあります。
そのため、不貞相手にだけ慰謝料の全額を請求した場合でも、最終的には「不貞をした配偶者」と「不貞相手」の負担割合を考え、「慰謝料の全額」ではなく「不貞相手の負担割合に相当する金額」の支払を受ける合意をすることも、実際には多いのです。
6 負担割合を考慮した、不貞相手からの支払額
この場合、不貞相手から支払われる金額は、50万円~100万円ほどです。
なお、話し合いや訴訟上の和解で合意に至る場合、支払う側の経済力や、「差押えをした場合にお金を確実に回収できるかどうか」も、事実上、金額に影響します。
また、一括で支払われる場合と比べると、長期の分割払いになる場合は支払総額が高くなります。