養育費を決めたら、決めた金額以上に負担を求めることはできない?
離婚と子ども養育費が決まった時点から、当事者の扶養や収入に関する事情が変動した場合、養育費を増額できる余地があります。
また、病気、怪我、進学など、通常の養育費では賄いきれないような支出が子供のために必要となった場合には、既に決まっている養育費とは別に、負担を求めることが可能です。
1 増額に繋がる事情
養育費の増額に繋がる事情としては、以下が考えられます。
- 養育費の支払を受ける側(=権利者)の収入が大幅に減った
- 養育費を支払う側(=義務者)の収入が大幅に増えた
- 養育費を支払う側(=義務者)の扶養義務の対象が減った
3つ目については、たとえば義務者が権利者とは再婚で、前妻との間にも子供がいて養育費を支払っていたが、その子供が就職して養育費の支払がなくなった等の場合が考えられます。
なお、養育費は、権利者と義務者の収入、子供の人数や年齢に基づいて決まります。
他に扶養すべき子などがいる場合には、これも考慮されます。
そのため、「養育費の増額に繋がる事情」が一つあっても、相手の側に「養育費の減額に繋がる事情」があるような場合、総合的に見ると養育費が思ったよりも増えない、むしろ減額を求められるといったこともあり得ます。
2 通常の養育費とは別に、負担を求めることができる場合
「算定表」の養育費の額は、「一般的に、親がこれくらいの収入であれば、子供にかかる(かける)支払はこれくらい」という考え方で決まっています。
そのため、養育費が決まった後に子供が病気になり、そのために支出が嵩むようになった場合などは、算定表どおりの養育費では賄いきれない特別の支出が発生しているため、この部分について、別途負担を求めることができます。
また、算定表は、高校以降の養育費についても、教育費については「公立高校に進学する」ことを前提としています。
私立の高校に進学することになったり、大学や専門学校の費用などは、算定表では想定されていません。
そのため、こちらについても、追加で負担を求められる可能性があります。
ただ、病気になることは、養育費の支払を受ける者(=権利者)や子供自身が選んだことではなく、前もってわかることでもありませんが、進学は、(受験に合格できるかどうか?といった問題はあるとしても)事前に検討し、選択した結果です。
進学にあたり通常の養育費では賄いきれないような支出が生じて負担を求める場合、「事前に義務者に相談をしたり、進学先や費用の負担について了解を得たか?」は問題となり得ます。
全て決まった後に「これだけ費用がかかるので、収入割合に応じて何割は負担して欲しい」等と求めても、「決まった後に聞かされても対応はできない。
お金を負担する約束もしていない」と拒まれる可能性は高いでしょう。
この場合、裁判所で調停や審判の申立をし、費用の負担を求めても、必要な金額を当然に負担してもらえるとは言えないので、注意が必要です。