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新型コロナ-調停にはどんな影響?(婚姻費用・養育費)

裁判所での期日について

4月17日(金),緊急事態宣言の対象が全国に拡大されたことを受けて、4月20日(月)~5月1日(金)に予定されていた裁判所の全期日が取消となりました。変更後の期日は,5月7日(木)以降に裁判所から連絡がある予定です。

調停では,調停委員2名,時には家庭裁判所調査官,そして当事者(ご本人・代理人の双方またはいずれか)と,出席者がかなり多くなります。「三密」を避けるため,今後,期日の入り方や開き方に大きな変化がありそうです。

4月17日以前の段階でも,一つの事件に一つの部屋が用意され,当事者はそれぞれ待合室で待機して,自分の番が来ると調停委員の待つ部屋に入るという通常のやり方ではなく,一つの事件に二つの部屋を割り当て,当事者はそれぞれ(待合室ではなく)自分に割り当てられた部屋に通されて,調停委員が二つの部屋を行き来するという方法がとられていました。この方法ですと,1日に入れることのできる期日が,部屋数の関係上,通常の2分の1に減ることになります。普段は調停に利用しない部屋なども活用しているという話でしたが,調停期日が入りにくくなっていることはたしかでしょう。

裁判所の今後の対応が待たれます。

支払がなければ生活できない!急いで払って欲しい!という場合は?

「婚姻費用や養育費の調停をしているのに,裁判所での期日が延期になったら,いつまでも支払ってもらえない。それでは生活ができない」といった問題が出てくるかもしれません。

この場合,「調停や審判で金額などが正式に決まる前に,暫定的な金額を決めてもらい,その金額を支払ってもらいたい(仮払)」という申立を行うことが考えられます。

※ 婚姻費用や養育費の調停の期日で「仮払をして欲しい」と言うだけでは足りず,仮払を求める旨の申立書を作成し,提出することが必要になります。提出先は,婚姻費用や養育費の調停を行っているのと同じ裁判所です。

なお,暫定的な「仮払」なので,どんな時でも当然に認められるわけではありません。「正式に決まるまで待っていたら生活ができない。今すぐ支払ってもらう必要がある」とわかってもらえるような説明や資料の提出が必要です。

ただ,こういった緊急性や必要性が「ある」と認めてもらえれば,裁判所の判断までに何か月も時間がかかるということはありませんし,相手が来てくれないので話が進まないということもありません。

裁判所が完全に機能を停止したわけではなく,感染拡大を防ぐために,「裁判官や書記官などは出勤しているが,当事者や代理人が裁判所に集まる期日は中止している」という状況であれば,この「仮払」の方法をとることで,ひとまず当座の生活費を確保できる可能性があります。

相手方が欠席する場合は?

では,裁判所の期日は予定どおり開かれるのだが,相手が「新型コロナの感染予防のため」といった理由で欠席する場合はどうでしょう?

調停は「話し合い」を旨としているため,相手の欠席が続いたり,提出して欲しい資料を出してくれないといった場合でも,ペナルティはありません。「協力的でないと,不利な判断をされる」ということは,起こらないのです。

こういった場合,「電話会議」という方法があります。この方法であれば,感染リスクを押して裁判所まで来てもらうことなく,話し合いをすることができます。

また,「一度欠席したが,今後は出席すると言っている」といった場合は「次を待ちましょう」と言われる可能性が高いですが,「今後も絶対に出席しないと言っている」といった場合は,裁判所の側から「これ以上調停を続けても話し合いがまとまる見込みはなさそう」という判断が示されるかと思います。「調停」が不成立になっても,「審判」という,裁判所が判断をする手続に進みますから,相手の協力が得られない場合は,「審判」にしてもらった方がよいでしょう。

申立はできる?受け付けてもらえる?

「今から申立をしようと思っていた」といった場合はどうでしょう?

この場合,裁判所に申立書を提出することだけでも,早くしておいた方がよいでしょう。 金額などについて具体的な取り決めを行っていない場合,「請求を行った時点」までしか,遡って支払を求めることができません(正確に言うと,求めることはできるのですが,相手が拒んだ場合,裁判所が認めてくれるのは「請求を行った時点~」の不払額に限られてしまいます)。調停申立を行えば,「請求した」という事実ははっきりしていますし,裁判所で「何月何日に受け付けた」ことも証明してもらえます。

現在(4月17日時点)は,裁判所が全く無人となり,動いていないわけではないため,申立を行えば「受付」はしてもらえます。郵送で申立を行ってもよいと思います。

書式や添付資料について

「婚姻費用 調停 申立書」といったキーワードで検索をすると,書式や記載例をあげている裁判所のHPも見つかるかと思います。こちらをダウンロードして印刷し,戸籍謄本など必要な資料も添付して,郵送で申し立てるといったことも可能です。申立の際は印紙や郵券も必要なので,金額の確認と購入,貼付や同封を忘れずに行ってください。

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この記事の作成者

弁護士髙木 紀子(たかぎ のりこ)

熊本県弁護士会所属 56期

依頼された事件を単に処理するだけではなく、依頼してくださる「あなた」の幸せを実現します! 「トラブル」の相手はご本人にとって非常に身近な人です。家族・親族が相手となると、どうしても「気持ち」に関わるところが前面に出てきます。でも、こういったお気持ちに関することを無視してしまうと、ご自身がどうしたいか、どんな形になれば「解決した」、「安心した」と言えるのかも見えず、法律上の問題を解決することもできなくなってしまいます。「この人になら、自分の気持ちを話してもいいかな」、「この人になら、『こうして欲しい』、『そのやり方はちょっと違うような気がする』と遠慮なく言えそうだな」、「わからないことがあっても、遠慮せず質問ができそうだな」と感じていただき、問題を解決する「心強い味方」になることができればと思っています。

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