お金(慰謝料)以外に、不貞相手に約束してもらえることはある?
不貞相手への慰謝料離婚「甲」を不貞をされた側(慰謝料請求を行った側)、「乙」を不貞相手、「丙」を不貞をした配偶者とします。
① 乙は、今後丙と再び不貞な関係を持たない。
② 乙は、丙の連絡先を全て削除する。
③ 乙は、今後丙と会ったり連絡をとったりしない。
④ 甲と乙は、乙と丙の不貞や、甲の乙に対する慰謝料請求について、第三者に口外しない。
⑤ 甲と乙は、合意書の存在や内容を第三者に漏らさない。
⑥ 甲は、甲の所持する不貞の証拠を廃棄する。
⑦ 甲と乙は、今後互いに接触しない。
「不貞は犯罪ではありませんが、民事上は「他者の権利(貞操権)を侵害する違法な行為」なので、「しません」と約束するまでもなく「やってはいけないこと」です。そのため、「不貞はしません」という約束を求めることには、何ら問題はありません。
なお、乙には「そんな約束はしたくない」と拒む自由はありますが、「①のような約束をしなければ、今後不貞をしてもお咎めなし」ではないので、乙が再び丙と不貞をした場合、甲は2回目の慰謝料請求ができます。この場合は通常、1回目よりも慰謝料額が増えます。
②や③は、①の約束の範囲をより広げたものといえます。誰と連絡を取り合い、誰と会うかはその人の自由なので、乙としては②や③のような約束をする義務はありませんが、「今後もう不貞はしません」という約束を信じてもらい、甲に安心してもらうであるとか、乙自身も丙とは関係を断ちたいといった動機から、約束をすることはままあります。
ただ、あれもこれもと禁止事項を設ければ、乙の今後の生活に大きな支障が出たり、「どこに住むか」、「どんな仕事をするか」といった基本的人権まで制約することになりかねません。たとえば、乙と丙に仕事上の付き合いがあり、今後も続く場合などは「仕事上必要やむを得ない接触を除く」といった文言を付け加えるなどして、乙の生活や自由があまりに制約され過ぎることがないよう配慮します。
④以下は、主には乙のための約束と言えます。
なお、甲が丙に離婚を求め、弁護士に依頼したり、離婚調停や離婚訴訟となる場合、「丙の不貞」について主張したり、これを裏付ける証拠を提出する必要が出てきます。こういった際も「乙と丙の不貞」について一切誰にも口外できない、合意書を証拠として提出することもできないとなると、甲は困ります。乙が丙に求償する場合も同様です。そのため、④や⑤の約束をする場合は「みだりに」口外しないといった書き方をするのが一般的です。