婚姻関係の破綻-「性的な関係」の証拠があっても,慰謝料が認められない場合
不貞相手への慰謝料離婚-
婚姻関係の破綻とは?
- 戸籍上はまだ「夫婦」であっても,夫婦としての関係が完全に壊れてしまっているような状態です。
「もう夫婦とは言えない」関係であれば,同居する,養う,自分以外の異性と性的な関係をもたない(貞操義務)といったことを相手に求めることもできません。したがって,「夫」や「妻」以外の異性と性的な関係をもったとしても問題はなく,慰謝料も発生しないということになってしまいます。
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どういった場合に「婚姻関係の破綻」が認められる?
- 裁判所は「婚姻関係の破綻」を簡単には認めません。
ただ,お互いがはっきりと離婚を望んでいて,離婚に向けた話し合いも進んでいるような場合は,「婚姻関係の破綻」が認められる可能性が高くなると言えるでしょう。
「離婚しよう」という点では合意していても,子供のこと,財産や養育費などお金のことで折り合いがつかず,離婚の調停や訴訟になるケースはよくあります。特に,未成年の子供がいる場合は親権者が決まらないと離婚はできないので,「お互い離婚したくてたまらないが,どちらも親権を譲らないので離婚届が出せない」ということも起こります。
特に以下のような場合には,「夫婦ともに離婚を望んでいる」ことや,「離婚も同然の状態になったのはいつからか?」が外から見てはっきりわかる,第三者の証言や文書などで裏付けがとれるため,「婚姻関係の破綻」が認められる可能性が高くなります。
・離婚調停でお互いに「離婚したい」と話し,離婚を前提に,親権やお金について話し合っている。
・離婚訴訟になっており,夫婦とも離婚を希望。
・夫婦の間で離婚の話し合いをしており,公正証書を作成するための段取りをしている。
・双方の両親や子供を交えて離婚について話し合っており,離婚を前提に別居がスタートしている。これに対し,以下のような場合には,離婚の話が出たとしても,「婚姻関係が破綻している」とは言えないでしょう。
・夫婦二人だけで離婚について話し合ったことがあるが,その後も一緒に住み,家計や子育て,家事などを協力し合っている。
・夫婦喧嘩の際,腹を立てて「離婚する!」,「わかった離婚しよう」というやり取りはあったが,それ以上の具体的な話にはなっていない。また,5年,10年など長く別居をしていて,住民票上の住所も別,家計も完全に別々,連絡を取り合うこともないといった場合も,「婚姻関係の破綻」が認められる可能性があります。
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家庭内別居,セックスレスの場合,「婚姻関係の破綻」は認められる?
- 「家庭内別居」と言っても,その中身は様々です。
「お金がない」など何らか事情があってどちらも家を出られないが,一緒に食事をとることはなく,洗濯などの家事や身の回りのことも別々,寝室も別,会話もなく,金銭面でも「自分のことは自分で負担し,相手のためにお金を出したり,相手にお金を出してもらうことはない」といった関係であれば,「ルームシェアをしている赤の他人」のようなものですから,「婚姻関係の破綻」が認められるかもしれません。
しかし,一緒に住んでおり,(子供たちのお父さんとお母さんという面が主かもしれませんが)互いに協力し合うという関係があって,離婚についての具体的な話し合いなどもされていない場合,「婚姻関係の破綻」はまず認められないと考えた方がよいでしょう。これは,セックスレスの場合であっても同じです。
なお,離婚についての話が全く出ていなかったとしても,長くセックスレスである,仲が悪くて喧嘩ばかりしているなど,夫婦の関係が「破綻まではしていないが,円満とも言えない」場合,慰謝料の金額が(夫婦円満の場合と比べて)少なくなることは考えられます。