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夫から「年金が減るのは困るので、年金分割にだけは絶対に応じない」と言われた。諦めるしかない?

夫から「年金が減るのは困るので、年金分割にだけは絶対に応じない」と言われた。諦めるしかない?
諦める必要はありません。

3号分割

まず、3号分割であれば、年金分割について夫婦の合意は必要ありません。
① 結婚が平成20年4月1日より後
② 結婚から離婚までの間ずっと第3号被保険者(※専業主婦や、扶養内での就労)
https://kumamoto-rikon.com/status/status-27/

①と②どちらにも該当する場合、離婚後、年金分割を求める側(ここでは妻)が年金事務所で手続をするだけで、年金分割が認められます。
夫の協力や同意は不要です。

また、「結婚は平成20年4月1日より前だが、②の条件は満たす」という場合は、少なくとも平成20年4月1日以降の部分については、3号分割の対象となります。
「結婚は平成20年4月1日より後だが、ずっと第3号被保険者だったわけではない」という場合も、3号被保険者であった期間については、3号分割の対象となります。

3号分割の場合、合意分割の場合と異なり、「年金分割のための情報通知書」を入手する必要はありません。按分割合は一律「0.5(50%)」です。
年金事務所での手続が必要である点は、3号分割も合意分割も同じです。

家庭裁判所への審判申立(離婚後)

3号分割の対象外である場合(または期間)については、「合意分割」が必要です。
「合意分割」と言われると、合意ができない場合はどうしようもない?とも思えますが、諦める必要はありません。
離婚後、年金事務所で手続をして「年金分割のための情報通知書」を入手し、家庭裁判所に年金分割の審判を行ってください。
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_17/index.html

裁判所の書式(「請求の趣旨」のところ)では、按分割合について、以下のように「0.5」と自由記入のどちらかを選んでチェックするようになっていますが、「0.5」にチェックを入れて提出して構いません。
□0.5 /□(         )

家庭裁判所で年金分割が争われる場合、按分割合は基本的に「0.5」となります。
元配偶者が「年金分割をしたくない」、「割合は0.5よりも減らしたい」といった主張をしても、通常なかなか認められません。
なお、自由記入の欄が設けられているとおり、(元)夫婦間で「0.5より少ない割合で分けよう」と同意することは構いませんし、自由ですが、0.5より「多い」割合での按分はできません。0.5が上限となります。

(注意!)
離婚後の年金分割は、離婚から2年以内に行う必要があります。
また、裁判所で手続をしただけでは完結せず、裁判所で受け取った審判書などを持って、年金事務所で改めて手続を行う必要があります。

家庭裁判所での離婚調停や離婚訴訟(離婚前)

離婚成立前であれば、家庭裁判所で離婚の調停や訴訟を行う際、離婚とともに年金分割を求める方法が考えられます。
この場合も、年金事務所で手続をとって「年金分割のための情報通知書」を入手する必要がありますが、離婚成立前であれば、「配偶者に知られずに入手し、確認する」ことが可能です(※離婚成立後は、元夫婦の双方に送られます)。
家庭裁判所での調停や訴訟は「できれば避けたい。やりたくない」という方も多いですが、まずは「年金分割のための情報通知書」を入手して、ご自身と配偶者とでどれくらいの差があるのかを確認してみては如何かと思います。50歳以上の方及び障害年金の受給権者であれば、この「情報通知書」に「受給できる年金の見込額」まで記載してもらうこともできます。

この記事の作成者

弁護士髙木 紀子(たかぎ のりこ)

熊本県弁護士会所属 56期

依頼された事件を単に処理するだけではなく、依頼してくださる「あなた」の幸せを実現します! 「トラブル」の相手はご本人にとって非常に身近な人です。家族・親族が相手となると、どうしても「気持ち」に関わるところが前面に出てきます。でも、こういったお気持ちに関することを無視してしまうと、ご自身がどうしたいか、どんな形になれば「解決した」、「安心した」と言えるのかも見えず、法律上の問題を解決することもできなくなってしまいます。「この人になら、自分の気持ちを話してもいいかな」、「この人になら、『こうして欲しい』、『そのやり方はちょっと違うような気がする』と遠慮なく言えそうだな」、「わからないことがあっても、遠慮せず質問ができそうだな」と感じていただき、問題を解決する「心強い味方」になることができればと思っています。

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